喉の痛み、発熱は風邪の時によくみられる症状ですが、「亜急性甲状腺炎」という甲状腺の病気でも良く似た症状がみられます。 『亜急性甲状腺炎とは?』 甲状腺に炎症が生じて、発熱や首の前面の痛みが見られる病気で、風邪に引き続いて発症することもあります。 風邪の時の喉の痛みは、物を飲み込む時に強く感じますが、本症では甲状腺の部分(首の前面)を外から触れると強い痛みを感じるのが特徴です。 風邪が数日で治るのに対して、この病気は2〜3カ月続きます(亜急性の名前はそこから来ています)ので、風邪の症状が長引いている時には甲状腺の炎症を考える必要があります。また、ホルモンの異常を伴う場合も多く、その場合には動悸、発汗、体重減少などの症状を伴います。 この病気は診察と血液検査、エコー検査で診断が可能で内服治療によって症状は速やかに改善されます(治療期間は2〜3ヶ月)。 気になる方はお気軽にご相談ください。
Author: 板垣英二
手術で治る高血圧
現在、日本人の約半数が高血圧と言われています。高血圧は放置すると、血管が硬くなり(動脈硬化)、ひいては脳や心臓に重大な障害(脳卒中や心筋梗塞)を生じる危険性が高くなります。そのため、非常に多くの方々が降圧剤による治療を受けていらっしゃいます。そのほとんどを占めるのは、明らかな原因が見当たらず遺伝的な体質によると考えられる高血圧(本態性高血圧)です。従って根本的な治療法はなく、血圧を下げるための降圧剤を長期間にわたって服用していただく必要があります。
一方、治す事の出来る高血圧もあります。その代表が原発性アルドステロン症です。「アルドステロン」は副腎という臓器から分泌されるホルモンで、身体に塩分(ナトリウム)を貯め込んで血圧を上昇させる作用があります。そのため、アルドステロンが過剰に分泌されると高血圧になってしまいます。
副腎に腫瘍ができて、その腫瘍がアルドステロンを過剰に分泌するものを「原発性アルドステロン症」と呼びます。この場合、その腫瘍を手術で取り除くことによって高血圧を治すことが可能です(注1)。高血圧患者さんの5%が原発性アルドステロン症(20人に1人)といわれていますので、かなり多くの患者さんが治せる高血圧である可能性があります。(ただし原発性アルドステロン症であっても腫瘍が見つからない場合には手術ができないこともあります)。
原発性アルドステロン症の可能性があるかどうかは採血検査によって判別できますので、お気軽にご相談下さい。
注1)すでに動脈硬化が進行している場合には、手術後も高血圧が残る事がありますが、それでも手術により血圧の改善が期待できます(降圧薬の減量など)。
善玉コレステロール(HDL-C)の高すぎもダメ?
かつてHDL-C(いわゆる善玉コレステロール)は動脈硬化を防いでくれるので、血液中のHDL-Cは高ければ高いほど良いと言われていました。しかし近年、それは違う、という事が徐々に分かってきました。
このほどデンマークで行われた10万人規模の調査では、死亡リスクが最も低くなるHDL-Cの値は男性が73 mg/dl (54〜77 mg/dl)、女性が93 mg/dl (69〜97 mg/dl)で、それ以上では高くなるほど死亡リスクが上昇するという結果でした。
従来からHDL-Cが少ないと死亡リスクが上昇する事が分かっていますので、死亡リスクはU字カーブを示すことになります。すなわち、HDL−Cは、多すぎても少なすぎても死亡率は上昇するという訳です。
何事もほどほどが宜しいようですね。
甲状腺とコレステロールの関係
健康診断や人間ドックなどの血液検査でコレステロールが多いと言われた方も多いのではないでしょうか。コレステロールの中でも悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が多いと動脈硬化、ひいては心筋梗塞や脳梗塞などの重大な疾患を起こす危険が高くなりますので要注意です。悪玉コレステロールが高値となる原因には生活習慣や体質などが関係しますが、甲状腺疾患が原因となっている場合もあります。
甲状腺ホルモンの分泌が悪いとLDL(悪玉)コレステロールの代謝が悪くなり血液中に溜まってしまいます。その場合には甲状腺ホルモンを補充する事でコレステロールを減らす事ができますので、コレステロールが多いと言われた方は甲状腺のホルモンを検査しておく必要があります。
逆に甲状腺ホルモンが過剰になると、血液中のコレステロールは低値になりますので、コレステロールが少ない方も甲状腺の検査が必要です。