近年、超音波検査が広く普及したことによって、今までは発見が難しかった小さな(1cm以下の)甲状腺癌がたくさん発見されるようになりました。そして癌治療の原則(早期発見・早期治療)に従って甲状腺癌の摘出手術もたくさん行われました。よし!、これで甲状腺癌で亡くなる患者さんは減るだろう、と思われたのですが、予想に反して甲状腺癌で亡くなる患者さんの数は思ったほどには減らなかったのです。なぜでしょう?

それは、このようにして発見された小さな甲状腺癌のほとんどは、大きくなったり、転移したりすることもなく、人の生命を脅かす事のない『無害な甲状腺癌』だったからです。ですからこのような癌をいくらたくさん手術しても、甲状腺癌の死亡率が劇的に低下することはなかった、というわけです。

現在、このような大きさが1cm以下の小さな甲状腺癌を『微小癌』と呼んでおり、そのほとんどが甲状腺癌の中でも最も悪性度の低い「乳頭癌」と呼ばれるタイプだということがわかっています。したがって微小癌が発見されてもすぐには手術せずに、経過観察することが多くなっており、腫瘍が大きくなった場合や、転移が懸念される場合にのみ手術をすれば充分だと考えられようになっています。

少し前までは、癌は早期発見・早期治療がすべてだ、と考えられていましたが、現在では悪性度が低い癌については経過観察で十分であると考えられるようになっています(前立腺癌でも治療なしで経過を見ることが多くなっています)。なので、甲状腺癌と診断されても小さなものについてはあまり心配する必要はありません。

詳しくは当院にご相談ください。

 

 

甲状腺ホルモンは体内の新陳代謝を促進し、心身の活動を活発にしてくれますので、健康な生活を営むために必須のホルモンです。

しかし高齢者では、あまり代謝が活発になりすぎても負担が大きくなってしまいます。例えば、高齢者では、わずかな甲状腺ホルモンの過剰が不整脈や骨粗しょう症を引き起こすことが知られていますし、80歳以上の高齢者では甲状腺ホルモンが少なめな人の方が長生きであることも報告されています。

ですから、高齢者の甲状腺機能を若い人と同じ基準で判定して、若い人と同じになる様に治療してしまうとかえって有害になることもありますので注意が必要です。

詳しくは当院にお尋ねください。

女性の方では、健康診断や人間ドックなどで「甲状腺が大きい」、あるいは「腫れている」といわれることが少なくありません。これは、医学的に「甲状腺腫」と呼ばれる状態で、甲状腺腫には以下の2種類があります。

 1)び漫性甲状腺腫・・・甲状腺の全体が大きくなっているもの
  
   バセドウ病や橋本病などの可能性が高く、ホルモン異常を伴う場合には内服治療
  が必要になります。

 2)結節性甲状腺腫・・・甲状腺の一部がコブの様に大きくなるもの
  
    甲状腺に腫瘍が出来ている可能性があります。悪性の疑いがあれば手術が考慮さ
  れます。

 診察と超音波検査によって1)、2)のいずれであるかを判定し、血液検査でホルモンの状態などを調べます。2)ではその他に甲状腺の細胞を採取する検査が必要になる場合もあります。

 1)、2)のいずれであっても、実際には治療を必要としない場合も多いので  
 あまり心配せずに気軽に検査を受けていただく事をお勧めします。

 ご不明の点はお気軽にお問い合わせ下さい。

妊娠・出産は甲状腺の働きを変化させます。特に、甲状腺に疾患を持っている方は妊娠前から特別な管理が必要になります。

  • 妊娠前

ごくわずかでも甲状腺ホルモンの不足があると妊娠しにくくなります。そのため、不妊の方は甲状腺機能を調べる必要があります。その結果、甲状腺ホルモンの不足がある場合には治療を開始しますが、その判断には専門的な知識が必要ですので当院にご相談ください。妊娠を予定しているバセドウ病の患者さんでは、治療法の変更が必要になる事がありますのでご相談ください。

  • 妊娠中

一部の妊婦さん(特につわりが強い妊婦さん)では、 妊娠10週頃に甲状腺ホルモンの分泌が過剰になり、動悸などの症状がでる事があります(妊娠時一過性甲状腺機能亢進症)。甲状腺自体に疾患がなければ自然に軽快しますので治療を必要としませんが、その判断には専門的な知識が必要ですので当院にご相談ください。

  • 出産後

出産の3〜4ヶ月後に甲状腺機能異常を起こすことがあります。これは自然に軽快することもありますが、治療が必要な場合もあります。その判断には専門的な知識が必要ですので当院にご相談ください。